私は、ひかりが好きだ。
  
気づかないうちに差し込み、気づいたときにはもう形を変えている。
手を伸ばしても掴めないのに、たしかにそこにあったとわかる存在。
一人で眺めた空や、誰かと笑い合った時間、言葉にしきれなかった感情。
日常の中にあるそうした瞬間はすぐに過ぎてしまうが、
あとから思い返すと、ひかりのようにこぼれ落ち、胸の奥であたたかく灯る。

本作では、自分自身の記憶を辿り、写真と言葉の両軸から記録した。
視覚だけでは捉えきれない温度や空気を言葉で補い、言葉だけでは残しきれない一瞬を写真で定着させることで、
曖昧な感情の可視化を試みている。
また、情報を過度に与えすぎず、余白を残すことで、見る人それぞれの記憶や感情と重なり合う余地を持たせた。
紙質や光の見え方にも配慮し、時間の移ろいが静かに感じられるよう構成している。
個人的な記録でありながら、他者の記憶や感情にも静かに触れるような、共有される体験として成立することを意識した。
製本には和綴じを採用し、頁をめくる行為そのものが時間を辿る体験となるよう設計した。
流れていく日々の中にある「消えてしまいそうなもの」に、かたちを与えるための手法としている。

頁をめくるたび、それぞれのひかりが、
やさしく瞬きますように、と。

You may also like

Back to Top